われら黒潮民族(南日本新聞社刊)
南日本新聞、高知新聞、琉球新報合同企画
黒潮に洗われる沖縄、奄美、鹿児島、高知から、果ては和歌山までに通じる文化と民族性を様々な角度から新聞社らしい取材によって組み立てられている。果てはポリネシアから朝鮮半島に至るまでの、柳田國男の言うところの琉球弧に近い着想である。これを読むと、国とか地域などの区分けがいかに便宜的な範囲を出ないものであるかが分かる。海は陸を隔てているのではなく繋げている道なのだ。
沖縄とはまた違った哀愁ある民謡の奄美や、民謡研究の大家、久保けんお氏の故郷である喜界島には以前から興味を持っていたけれど、黒潮を辿って豚革料理がある韓国の済州島や、よさこいの高知にも行ってみたい。そうすることによって屋久島のことを更に深く知ることになるだろう。
屋久島の古い民謡、「まつばんだ」はもともと琉球の旋律であったという。自分が聞いたことのある歌唱はすべてアカペラで、琉球音階の特色も弱くなってしまっていた。しかし屋久島へ伝来する以前のまつばんだは三線の伴奏が付いていたかもしれない。屋久島に器楽が殆ど存在していないことを残念に思っていたのだけれど、これはもしかすると。