独特の語り口が好む。辺見 庸の文体。
北京やハノイの駐在を経験した著者の実体験が匂いたつエッセイ。東側の大きな動きと、日本を含む西側の動かなさへの焦燥を、消化不良な雰囲気にのせて綴る。
「赤い橋の下のぬるい水」でみせた、ひなた臭いエロティックと、「もの食う人びと」の実地感が相俟ってリアルな著者の人と成りが見え隠れする。
僕らがいま立っているここは、それでもこちら側なんであって、購買に対するぶよぶよした観念と、遺棄に対する憤り、つまりこのクソみたいな世界に対する顛倒した思いがのしかかってくる。