東京で劇団に籍をおきつつ暮らしている妹、たれぞのアパートへ遊びに行く。会うのは2年ぶりだ。
ひとしきり缶ビールをあけつつガンコ親父の話なんぞしていると、やはり世界でひとり、血のつながった妹なのだと思い出す。ただ同時に、この兄と妹は子どもの時空から遥か遠く現代へとやってきた、大人と大人であるという事実にも改めて感慨をおぼえる。
彼女が閃いたアイデアを俺がバラすわけにはいかないから詳細は秘密だが、彼女の特技である服飾の技術を活かしつ、点と点に孤立する年寄りを線で結び面を成す、面白いことをいま考えているみたい。それは兄も妹もなく、同じ時代に生きている大人同志として、素敵な発想をする仲間なんである。

ところで、奴の「酒を飲んでプルルと寒くなる者は南国にルーツがあるのだ」という話には妙に納得させられた。雪山でパトラッシュが首にウイスキーを下げてやってきても、俺は天使について逝ってしまうだろう。ああ寒い。
夜も更けた。たれぞは近くの駅まで見送ってくれるという。二人でシャッターの降りた駅前の商店街を歩く。