2012年02月12日

一人のチンパンジーと猫のロクさん

日本学術会議主催の、ワイルドライフサイエンス部会シンポジウムに行ってきた。昨夜に引き続き、ちょっいと学生気分である。

興味深かったのは、京大の松坂哲郎教授の公演。霊長類学者だ。この教授はゴリラやチンパンジー、オランウータンを〜人で数え、雌を女性、雄は男性と呼ぶ。

公演はアウトグループという考え方で、人を知るには隣人である霊長類を知るとよい、アフリカに棲むゴリラやチンパンジーを知るにはアジアのオランウータンを知るとよい、という角度から語られた。


ヒトのすぐ隣の枝に位置するチンパンジーの研究から分かったことで面白いのは、コンピュータの画面に0から9の数字をランダムな位置に表示すると、訓練により順ぐりに指さすことが出来るようになる。テレビで観たことのある向きもあろう。

さらにその数字表示を一瞬で隠してしまっても、同様に指さすことができるという。瞬間的な記憶力ではヒトに勝るのである。

また、三歳のチンパンジーとヒトに、猿の輪郭だけが描かれた絵と鉛筆を渡すと、ヒトは目や口を描くのに対し、チンパンジーはひたすら輪郭をなぞる。

このことから分かるのは、何もないところから想像する力はヒトの特質であるということ。記憶力と想像力に於ける、ヒトとチンパンジーの脳の機能の差が分かる。


チンパンジーは重病にかかっても悲観的になったり諦めたりしないそうだ。ヒトは想像力があるが故に、自らの行く末を案じて絶望する。


昨日の山極寿一教授の公演からも近いことを感じたが、想像力を最大の武器とするヒトが、反原発は猿に戻ることなどと発言するとは、まったく嘆かわしい。チンパンジーは猿じゃないけど。

昨年事故を起こし永きに渡る環境破壊をしておいて、現代の技術では事故の再発が無いと言えないこの危険性を想像するのはそんなに難しいのだろうか。想像するのが苦手でらっしゃる石原閣下こそ猿であろう。


夕方になり、会を抜け本日二件目の予定のために安房へ向かおうと本家の前を通りかかったら、仲良くしていた猫のロクさんが轢かれて死んでいた。まだ温かかった。柿の木の下に埋めて、線香をあげる。悲しくてやりきれない。

本家には雌猫がいないので、どこかに出張してきた帰りだったろうか。猫の恋、は二月の季語である。
posted by abesin at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 未分類
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